尺鮎が9月以降に多く釣れる理由は?

哺乳類と違って魚類は生きている限り成長する。

これは生物学的に確認されていることですが、そんな魚類でも成長が止まる時期があります。それは精巣や卵巣に栄養が摂られる時期。したがってコイのように性成熟後、放精や産卵を繰り替えす魚種にはこれが当てはまるのですが、アユのような年魚にはこれは当てはまらないと私は考えています。

ヤマメは2年続けて産卵をする個体もありますが、産卵後の晩秋から初春までは餌が少ないため、性成熟するまでの大きさ以上に成長することはないように感じます。山岳渓流で尺まで成長する個体は、性成熟するまでに急激に成長するか、性成熟しない特殊な魚。少なくとも私が釣った尺物はそのような共通点がありました。

8月後半に8寸くらいの鮎が釣れている川では、9月にはさらに成長して9寸や尺鮎が期待できそうという主旨のことがよく書かれています。確かに尺鮎が釣れる可能性が一番高いのは9月なので、それまでに成長したと考えるのは不思議ではありません。

私はこれについて否定はしませんが、性成熟の時期を考えると9月になってから3~6㌢の成長を難しいのではないかと考えています。ではなぜ尺鮎が9月になると釣れるのか?この答えは簡単で、8月までに尺鮎に成長した個体が釣れる場所に出てくるからだと思います。

私は今年狩野川で5月31日に25㌢を釣りました。もしこの個体が誰にも釣られなければ、8月には尺鮎になっていたと思います。鮎の大きさは精巣や卵巣が成長を始めるまでに、どれくらい大きくなるかで決まる。もちろんこれに該当しない個体もいると思いますが、年魚である限りこれから大きく逸脱することはないように思います。

この考え方からすると、尺鮎が釣れる川にしたければ幼魚放流の時点で大きい種苗を選ぶ。そして産卵期が遅く、雌雄を意識して掛かるようになるまで追いが悪い種苗を選ぶ。この条件から絞り込むと、海産蓄養の大きい種苗が尺になる確率が一番高いのかもしれません。また種苗の川への馴染みを考えると、天然遡上のピークが確認されるくらいには放流を終わらせておくべきなのでしょう。

「尺鮎が釣れる石は決まっている」とよく言われますが、これはまさに下りに入った鮎がその周辺で一時的に止まるからに他なりません。2012年10月の狩野川でも、あそこに入れば高い確率で尺鮎が釣れるという場所が少なくとも3カ所ありました。週末は暗い時間から釣り人が並んだので、ご存じの方も多かったと思います。

こう考えると9月以降に尺鮎が釣れる確率が高いのは、尺まで成長した鮎が下りに入って釣りやすい場所に出てくるからと言えそうです。では尺まで成長した鮎はどこにいたのでしょうか?確かにJinzooや九頭竜、富士川などの大河であれば竿抜けは沢山あります。しかし狩野川のような場所で竿抜けはあるのでしょうか?

これは「釣りにくいポイント」と考えず、「釣れないポイント」と考えればどうでしょう?釣れないので竿を出さないポイントは結構あるものです。例えば盛期にアオノロがひどくて竿を出すのを躊躇する大見川流域。本流であればとても深い淵、釣りにくい縦の岩盤、流れがないような場所にある大きな飛び石、秋に鮎が下ってくるまでオトリをつなぐことが難しい下流域など。

カワウに喰われない、そして釣り人に釣られない場所で尺まで育つ。もちろん狩野川は尺まで育つのは幼魚放流の魚なので、放流から梅雨明けまで水位が安定していることも重要です。死ぬことはなくても冷水病が発病した個体は、回復するまでは罹患前の成長率は維持できません。

狩野川漁協のブログによれば、29㌢がお盆前に釣れているので尺鮎は必ずいるでしょう。その鮎が釣れる場所で止まるかがポイントですが、その鍵を握るのは9月に入ってからの長雨。落ち過ぎたら友釣りの対象になりませんし、鮎は餌がないと体長が縮むので、この時期に白川になってしまうと、31㌢くらいないと泣き尺になってしまうかもしれません。

経験的に尺鮎が出るかもと期待される時期が、その川のピークであることが多いです。今年尺鮎が期待されているJinzooも然りで、友釣りではもう難しいかなと思いますが、今後の展開を見届けたいと思います。

by scott1091 | 2015-09-09 22:00 | 鮎釣り/狩野川他 | Comments(0)