これが「領スペシャル 90」と「龍飛SSS X09」です!

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一時期、鮎竿で一世を風靡した「天龍」(*注)をご存知でしょうか?

今はルアー部門に力を入れているので、その世界では知っている人も多いと思います。この会社の前身は、もともと六角竿(輸出用バンブーロッド)の製作からスタートしており、生粋の竿作りメーカーです。しかしグラス竿やカーボン竿の時代になってもOEM生産が多く、自社ブランドが知られる存在ではありませんでした。踏み切り用のポールなども作っているようですけど・・・。

そんなメーカーが、一気に自社ブランドを前面に出したのが鮎竿です。バブル時代のJPA(日本プロ友釣り協会)全盛期の頃は、多くの所属プロを抱えておりました。当時の大手メーカーは、ダイワ、シマノ、がまかつ、リョービ、マミヤOPの5社。ダイワはJPAに参加しなかったので、協会認定プロはこの4社に「天龍」を加えた、5社いずれかの道具を使っていました。
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私はそれまで「天龍」はフライロッドのOEMでしか知りませんでしたが、この時代は店頭で鮎竿を見かけることもありました。最初に目にしたときは、一昔前の鮎竿が売れ残っているのかと・・・。こんな重たくて、いまだに一体整形されていないグリップに剥き出しの尻栓金具。いったい誰が使うのか?

当時「天龍」の竿を使っているプロ集団は、「天龍カラー軍団」と呼ばれていました。その由来のとおり竿の色使いが奇抜なため、これだけでもかなり抵抗があります。しかし所属しているプロを見ると、トーナメントで上位入賞者も多かった。実際に使ってみないと竿はわからない。これが私の持論ではありますが、さすがに「天龍」だけは今ひとつ踏み切れません。

しかし実際に使ってみる機会は、思ったよりも早く訪れます。当時使っていたシマノ「Special競 Hi-Speed H2.5 90-95」を盆休み直前に折ってしまい、予備竿のがまかつ「INDUCER 引抜早瀬90」1本で遠征に行かなければならなくなったからです。当時馴染みの釣具店に行くと、すでに売れ筋の鮎竿は完売。残っているのは初~中級モデルのみ。
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しかしその中に新製品の「龍飛SSS X09」が残っていました。当時のメーカー希望本体価格は160,000円。「天龍」のトーナメントロッドでは、ハイエンドモデルの位置付けです。カラーやデザインも許容範囲だったので、その場で買うことにしました。釣り仲間でもあった店員さんが、「本当にこの竿買うの・・・」と驚いたのをよく覚えています。今後売れる見込みがないとのことで格安にしてくれました。

こんな感じなので、私もこの竿にはまったく期待していませんでした。しかし遠征でさっそく使ってみたら、かなり重たいですが思ったよりも使いやすい。結局このシーズンは、「Special競」のパーツが届いてからも「龍飛SSS X09」を使いました。1996年の話です。

使われているカーボン素材やコスメは、ダイワやシマノと比べるべくもありませんが、肉厚に巻かれた竿の安定感と粘りは魅力。自重は嵩みますがカーボン弾性率が低くても、テーパーデザインと肉厚に巻くことで、理想の調子を作ることができる。そして鮎の大きさや流れの条件によっては、自重よりも竿の安定感や粘りが優先することを実感させてくれる1本となりました。
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そしてこのメリットが最大限生かされたのが、故・諏合正一氏の「領スペシャル 90」。この竿は穂持ち(2番)から上を交換することにより、「ツバメ返し」用の剛竿にもトーナメントロッドにも使えるよう設計されていました。「天龍」の鮎竿作りはこの年をピークに規模を縮小。所属プロはほとんどがマミヤOPに移籍し、「天龍」は軸足を徐々にルアーロッドに移行して行きます。

しかし肉厚とテーパーデザインで調子は作れても、感度の面では高弾性カーボンにはかないませんし、自重が圧倒的に違います。その後もダイワ、シマノは高弾性化の道を進み、塗装も塗膜が薄い「金属コーティング」を採用。その後ダイワは、「金属コーティング」から「ゼロコーティング」と「エアグロスフィニッシュ」に移行しました。がまかつも同じように高弾性化を進めますが、デザインや塗装は熱烈なファンに支持されて大きな変更はなく現在に至っています。

私が使う竿もこの技術革新とともに変わりましたが、ダイワやシマノとあわせて、最先端とは言えないマミヤOP製の竿も使いました。これは「天龍」と同じようにシマノやダイワの竿より安定感と粘りがあったこと。そして私のテンション系の釣りは2番に張りを求めるので、パワー穂持ち(2番)が標準装備されていたからです。
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そして九頭竜に行くようになってから「超硬」ロッドを強く意識するようになり、「天龍」の竿の感触を思い出します。しかし「天龍」には、すでにこのクラスの竿がありません。2003年と2005年に、下野オリジナル「MJB Sinker Version 83TOP」、ダイワ「硬派疾 荒瀬抜90SJ」、「硬派剛 強瀬抜90SX」、「銀影競技メガトルクⅡ 荒瀬抜90SD」、がまかつ「パワースペシャルⅡ 引抜荒瀬90」の5本を使ってみましたが、どうしても最後に「領スペシャル 90」を九頭竜で試したい衝動に駆られます。

しかし「領スペシャル 90」が生産中止されてすでに8年。また伝説の鮎師となった諏合氏の人気は高まるばかりで、「領スペシャル 90」、「領スペシャルⅡ 90」いずれも中古市場への出物は皆無。今回掲載した竿の持ち主が貸してくれるとは言いましたが、大切にしているものなので万が一があるので実釣はできません。「天龍」の復刻版「領Ⅲ 90 EXTRA HARD」もスペックが異なるようなので、もはや手の打ちようなし。

そんなとき偶然残っていたのを見つけたのが、下野オリジナル「振子Special 85」。この竿はまさに「領スペシャル 90」の流れを汲んだ「天龍」の竿。2000~2002年に販売されたものなので、店頭で3年以上売れ残っていたことになります。希望本体価格は150,000円でしたが、これも格安で入手できました。
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そして2006年の九頭竜でこの竿を使った結果、総合的に導き出された結論が以下の六つです。そしてこの要件を満たすべく開発された「超硬」ロッドが、今の「Super LightⅢ」と「龍芯竿」になります。

①超硬でも感度が良いほうが絶対に有利
②竿が曲がったときにブレや捩れが出ない安定感
③返したときの鮎の跳ね上がりを押さえる2番、3番の強さ
④主導権が取れる先調子
⑤胴折れしない腰の強さと全体のバランス
⑥当然、自重は軽い方がベター


フナヤオリジナルは高弾性カーボンありきという印象をお持ちの方も多いと思いますが、竿の設計の原点はテーパーデザインです。そして鮎竿のような並継竿は、各節の切り分けとジョイントの存在が、テーパー設計に大きく影響します。超高弾性カーボンは、そんなテーパー設計の自由度を広げるもの。

竿の開発に携わるようになって、より多くの竿を見るようになりましたが、やはり竿は実釣してみないと詳しいところはわからない。この考えは今もまったく変わりません。備忘録の一環として竿の写真を掲載しておきますので、ご興味のある人はご覧くださいませ!
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(*注)
「天龍」は現在も鮎竿を作っていますので注記しておきます。2011年の新製品、球磨川の尺鮎に特化した「Thirty-One」は長さも10.3㍍とユニーク。「天龍」の素材構成と肉厚設計から生まれる粘りを、上手く利用した商品開発といえるかもしれません。私は体力的に厳しいですが・・・。

by scott1091 | 2011-11-26 19:23 | Comments(7)

Commented by rixtuki12 at 2011-11-27 17:50
こんにちは!ご無沙汰しています。
今回の記事 とても興味深い内容です。
以前、諏合氏のビデオを見て現代の釣りとの違いにショックを受けました。形容しがたいですが現代の鮎釣りに失われている気がする、遊び、おおらかさが感じられ、私もこんな鮎釣りがしたいな。と感じておりました。
 フナヤさんのロッドはそのエッセンス?が入っている形になるのですね!
もう少し年を重ねたら 法被?きて笠被って 釣りしてみたいです(笑)
Commented by 狂的KOJI at 2011-11-28 20:18 x
本格的に鮎釣りを始めて6年チョイ・・・
諏合さんを知ったのは、確か2年前です。

人より前に、荒い場所に立てば釣れると勘違いしてた頃(笑)
満遊記のビデオを見てショックを覚えました。
竿を詰めるって・・・スゴイ事するなぁ~って。

僕が鮎釣りを始めた頃、貸してもらった竿は天龍。
確か「マグナカラー90MH?」という白い竿でした。
竿を持つ手が震えたのは、良き思い出ですw
Commented by scott1091 at 2011-11-28 22:02
rixtuki12さん、こんばんは~!

諏合流についての解釈は色々あると思いますが、私はまるっきり反対の見方をしております。職漁師として突き詰めていくと、あらゆる無駄や遊びを排除しなければなりません。仕掛けやハリにコストを掛けないのはもちろん、掛かり鮎はタモ受けよりダメージが少ない方法で素早く獲り込む。

0.6号の通しで目印も付けないので、予備の仕掛けはトヨフロンのスプールだけ。鼻環回りの予備とチラシは菅笠に。法被は「領」のデザインも含めてまさに仕事着。JPAのトーナメントでは「天龍」のベストを着ていましたが、これはメーカーとの絡みもあるのでしょう。
↓続く
Commented by scott1091 at 2011-11-28 22:05
↑続き
トーナメントでは、もはやこの時代の竿はまったく通用しません。しかし九頭竜などの特殊なフィールドになると、諏合流の効率を最優先した釣りが必要となります。流れに立っているのがやっとの場所で、小さな鼻環やサカバリを打つのは逆に非効率ですし、複雑な仕掛けはトラブルのもと。九頭竜舟も時代遅れのような作りですが、抵抗が小さいので腰に負担が少ないですし、立ち込みも楽です。

竿もしかりで、厳しい場所ではやり取りを楽しむ余裕なんてありません。友人との笑い話で、竿抜けを求めて極限まで立ち込んでいるのに、「お願い、ここで掛からないでと思うことあるよね~」と。このような場所では錘の下で高切れすれば、5号玉でも弾丸のように飛んできます。(-""-;)

過去の記事で書いていますが、私の九頭竜での目標は「競技志向者と職漁師の釣り方の良いところを組み合わせた独自スタイルを確立する」というもの。そのために必要だったのが「SLⅡ」であり、その延長にあるのが「龍芯竿」とご理解くださいませ。もちろん急瀬以下の竿は、また優先すべきものがそれぞれ異なります!(^ω^)ρ
Commented by scott1091 at 2011-11-28 22:27
狂的KOJIさん、こんばんは!

勘違いではありませんよ~。九頭竜であれば、人が入れない場所に立てれば確実に人より多く掛けられます。しかしその極限状態で、掛けた鮎を返し、オトリを交換し、再び掛ける。これらの動作全てを完璧にこなせなければ、曳舟の鮎は増えません。それができなければ、できるところまで流芯から後退するのみ!(笑)

今回紹介した「龍飛SSS X09」でも、カタログ上の自重は285㌘。実際に測ると289㌘あります。もし使われた竿が「マグナカラーシンカーフォース90」であればカタログ上の自重は360㌘ですから、持つ手が震えるのもしかたがありません。
Commented by 村上 at 2014-09-10 23:52 x
始めまして、記事拝見させて頂きました。
私は那珂川で諏合さんの会 湯殿会 領です。
いきなりですいません。今だに諏合さんを尊敬し法被を着て釣り三昧です。この度天龍からドンスペシャル を再発売になりました。
受注生産になりますが、興味ありましたら連絡ください。
(湯殿会)村上 連絡先090ー1853-8889
Commented by scott1091 at 2014-09-11 20:34
村上さん、ご案内ありがとうございます。

ふなさきオトリ店の写真で湯殿会を拝見していますし、私も2年前に会員の方と神通でお会いしました。那珂川に通っていた頃はよくお見かけしたので、法被姿がとても懐かしかったです。「領スペシャル」の復刻は喜んでいる方も多いでしょう。諏合さんの人気はいまだ健在ですし、生前をしらない世代にも伝説として語り継がれています。

私は今のところ購入する予定はありませんが、これを見て興味をもたれる方もいらっしゃると思います。もし差支えなければ、以下の点についてご教授頂けたら幸甚です。

①復刻されたのは初代「領スペシャル」ですか?
②荒瀬仕様で全長8.5㍍くらいですか?
③塗装(デザイン)は同じですか?
④穂先は従来のリリアン回転トップですか?
⑤申込期限はいつまでですか?
⑥価格はかつてと同じくらいですか?

まだあの掛け声やられていますか?私も九頭竜で回りに人がいないとき、こっそりやってます。かつて那珂川で同じスジに並んだとき、私が掛ける度にカミにいる法被の方が声を出してくれたのが嬉しかったです。