「α90」の開発にあたって。「硬中硬」の位置づけは?

「フナヤオリジナル」の「硬中硬」クラスとして、「α90」を開発中であることは、このブログを読んでくれている人はご存知だと思います。この「α90」の開発を通して、ずっと考えていたのが「硬中硬」の位置づけです。

各メーカーでいえば、ダイワであれば「中硬硬」。シマノであれば「H2.5」、がまかつであれば「硬中硬~引抜早瀬」と表示されるクラスだと思うのですが、一昔前に比べると鮎竿は確実に硬くなってきています。そして「持ち重り」や「自重」がさほど変わらなければ、より硬い竿の方が応用が効く。

これはトーナメントロッドの主流が「Special T」や「H2.6」になっていることからもわかります。これらの竿はまさに「早瀬」クラスなので、時代は確実に「硬中硬」から「早瀬」に移りつつあるのだと思います。
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私が過去使った竿のなかで、もっとも柔らかい竿は「スペシャル競90-95 H2.25」と「銀影競技スペシャルF中硬9.5」の2本。いずれも「超高弾性カーボン」と「金属コーティング」の採用により、竿の張りそのものは「H2.5」や「中硬硬」と大差ないレベルに仕上がっていたこと。そしてやはり自重が魅力で購入しました。

しかし実際に使ってみると、やはり「H2.5」や「中硬硬」のようには繊細な釣りができない。柔らかい竿で、より細い糸を使うのが繊細な釣り。こう考えている人が多いと思います。しかし私が考える「繊細な釣り」とは、正確にオトリをコントロールし、狙うべきラインやピンスポットを緻密に攻めることだと思うのです。

この時代は、まだオバセによる泳がせが全盛の時代でしたが、私はすでにテンション系の釣りをしていたので、この2本の竿は非常に歯がゆかったです。高価な竿なのでかなり頑張って使いましたが、このシーズンは釣果激減でした。

こんな経緯もあって、それ以降は「H2.5」、「中硬硬」、「引抜早瀬」より柔らかいクラスには、いくら自重が魅力でも手を出しませんでした。しかし時代も変わり、「超高弾性カーボン」と「レジン低減技術」により、竿は飛躍的に軽くなりました。
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↑↓いずれも尻栓込みの自重
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人間の手は、しっかり握れば握るほど感度が落ちます。どんなに感度の良い竿でも、しっかり握ってしまえば、その竿のメリットを最大限利用することができません。したがって鮎竿が軽いことは、最大のアドバンテージであることは間違いありません。

しかし同時に、これ以上軽くなくてもよいという下限が存在します。それは自重を追求するあまり、風に弱かったり、繊細な操作性が犠牲になるからです。人それぞれ腕力や握力が異なりますが、これらの総合的な判断が、まさに今の「Special T」や「H2.6」への評価だと考えています。

このブログで以前書きましたが「Z90」には興味ありませんが、「Z-SVF」で作られるであろう「Special T」や「Special MT」には非常に興味があります。これは今のトーナメントロッドの主流が「早瀬」であるのに対し、近い将来「急瀬」に置き換わる可能性があるからです。ちょっと極端な書き方ではありますけど・・・。
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↑「プロト2T(改)」。2㌘重くなりました

先にも書きましたが、同じ持ち重り感と自重なら、硬い方が汎用性が高い。しかし全てのシチュエーションで扱いやすいかというと、これは明らかに否。この竿は硬すぎるという感想を聞くことが多いので、これを例にもう少し掘り下げてみましょう。

まず鮎竿における操作を大別すると、以下の三つだと思います。

①オバセを含むオトリ操作
②掛かり鮎を抜く操作
③風に抗するための操作


では竿が硬いと、三つの操作にどのように影響するでしょうか?

<①への影響>
メリット :(A)操作精度が高い
     :(B)オトリを入れる場所を選ばない 
デメリット:(C)ラインを張ったときのオトリへのインパクトが大きい

<②への影響>
メリット :(D)場所を選ばず抜ける
デメリット:(E)ビリや掛かりどころが悪いとバレ率が高くなる
     :(F)油断すると伸されやすい
     :(G)魚が小さいと釣趣に欠ける

<③への影響>
メリット :(H)竿の吹かれが少ないので操作精度がよい
デメリット:(I)裏返しでラインが張ったときのオトリへのインパクトが大きい

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↑大して曲がっていないように見えますが、6番の曲がりを見ればご想像頂けると思います

こんな感じではないでしょうか?そして硬すぎるという指摘は、(C)、(E)、(F)が一番影響しているように感じます。釣り人の技量も重要な要素ですが、やはり竿が硬くなるほど操作がタイトになるのは間違いありません。車のハンドルに遊びがあった方が運転が楽であるというのとまったく同じです。

そして「F1ドライバー」であっても、公道を走るときはハンドルに遊びがあった方が、同乗者と話もできるだろうし、運転も楽なはずです。ようはどこで妥協するかで、それを決める要素は技量、体力、スタイル、そしてシチュエーションだと思います。

竿には多少のファジー感があった方がよい。これが硬すぎるという評価の裏返しではないかと思うのですがいかがでしょう?ここでは本来もっとも影響する、持ち重り感や自重の条件は排除して考えております。実際は硬い竿は重たいというのが、竿の選択に大きく影響しているのは間違いありません。

このファジー感は、硬い竿でも穂先を替えることでかなり解決されてしまうのですが、ここでは割愛させて頂きます。
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↑「征龍竿EM」と「プロト1」の比較。錘は100㌘
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↑「征龍竿EM」と「プロト1」の比較。錘は150㌘

さてこの週末のテストで、弟子アナキンとの会話を一つ。


<アナキン>
「マスター、今日の竿操作はキレがありませんね!」
「いつもとイメージが違いますが、その竿ダメなんじゃありませんか?」

<マスター>
「ばか者。操作が大きくなるのは『征龍竿EM』より柔らかいからだ!」
「同じように誘うと、竿の操作幅が大きくなるのは当たり前だろ。」

<アナキン>
「ちょっと持っていいですか?」

<マスター>
「細いから握り潰すなよ!」

<アナキン>
「わぁ~、あらためて『Special T』が良い竿だと実感しました!」

<マスター>
「ばか者。そう感じるのがまさに『硬中硬』と『早瀬』の違いだ!」
「今日は、予備竿を持ってきた?」

<アナキン>
「はい。ちょっと前のリミプロを持ってきました!」

<マスター>
「すぐに持ってきなさい!」

しばし後・・・

<アナキン>
「はい、これです。」

<マスター>
「お前にしては綺麗に使ってるな!」
「何といっても、固着した『競』を石で直接叩く豪傑だからなぁ…。」
「ほれ、振ってみなさい!」

<アナキン>
「こ、これは~。」
「マスター、この竿ではもはや戦えません。」

<マスター>
「何度も言うが、これが『硬中硬』と『早瀬』の違いなのだ。」
「竿は好みだから、お前の好みが『早瀬』だったに過ぎぬ。」

<アナキン>
「マスターもですよね!」

<マスター>
「だまらっしゃい…。」



以上です。ちょっと長くなりましたが、やはり「硬中硬」であっても1~3番の張り。そしてその張りを支えても、ブレがでない4~8B番は譲れないというのが結論です。
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↑「プロト2T」と「プロト2W」の比較。錘は100㌘。わずかに下がっているのが「W」
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↑「プロト2T」と「プロト2W」の比較。錘は150㌘。わずかに下がっているのが「W」

その点で、残念ながら「プロト2W」は感度以前に没です。200㌘を切る自重、そして同じクラスの竿としては魅力的ではありますが、残念ながら精度の高いテンション系の釣りはできません。

次に「プロト2T」ですが、これも1~3番がふらふら(ヒワヒワ)してストレスが大きい。先日折ってしまった「プロト1」の方が良かったので、1~3番を交換するとかなり改善しました。しかし1~3番が強化されたことから、胴にフラつき感が出ています。これがまさにアナキンが指摘した事項です。

「硬中硬」ということで、「征龍竿EM」と明らかな自重差を意識してきましたが、今回の「プロト2」でその点は諦めざるをえない感じです。私の「征龍竿EM」は実測で228㌘。それに対して「プロト2T(改)」は無塗装にもかかわらず213㌘です。

しかし10㌘違えば、竿のパワーは雲泥の差です。「プロト2T」はカーボンを肉厚に巻いて粘りを重視したことにより、自重が嵩んでいると思われますが、ここからは設計者の力を借りるしかありません。自重低減を狙って、私の提言で元竿を細くしたのも良くなかったのでしょう。040.gif
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↑「プロト2T(改)」と「プロト2W」の比較。錘は100㌘。穂先が上にあるのが「2T(改)」
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↑「プロト2T(改)」と「プロト2W」の比較。錘は150㌘。穂先が上にあるのが「2T(改)」

今回のテストでは、「プロト2T」では23㌢のオトリで23㌢は抜けませんでした。「プロト2T(改)」は1~3番が強化されたことにより曲がりが胴に入るので、このクラスでも何とか抜けました。しかし「征龍竿EM」に比べるとオトリを入れるのに怯みがありますし、瀬の段落ちを押さえられないケースも多くあります。

「硬中硬」で、そんな場所釣らねーだろーというご指摘を受けそうですが、狩野川のように変化の多い川はこのような場所が点在しておりますし、竿抜けであることが多いもの。「早瀬」のようにはいかなくても、やはり「硬中硬」は一般河川ではオールマイティであるべきと考えます。

今のプロトでは「硬中硬POWER」は謳えません。
しかしあまり突き詰めると、「征龍竿EM」になってしまいます。
「α90」の開発は、難航しそうです。

「プロト2T」の改良パーツで進めるか、切り長さも含めて早い段階で全面改良に踏み切るか…。フナヤさんとサンテックさんの判断を待ちたいと思います。
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by scott1091 | 2011-07-20 07:59 | フナヤオリジナル | Comments(0)